「あの……これ」
「あ、俺の名札」
「昨日…落とされたみたいで…」
「あぁ、たぶん。…ありがとな」
「あと―…」
ちゃんと、言わなきゃ。
あかりのためにも…
…自分のためにも。
「私の名前、楠美ララっていいますっ!
あの…私の連絡先です!
良かったら連絡ください!それじゃっ!!」
私は早口にそう言って
ダッシュであかりのもとへ引き返した。
相手の反応は
恥ずかしくて顔をよく見れなかったために
よくわからない。
ただ…
やれることは、やったつもりだ。
「おかえり♪」
「あかり、見てた?」
「バッチリ見てたよ♪」
「…―どうだった?」
「うん。よく頑張った」
「よかったぁ」
あかりの言葉に
安心したものの…
私の心の中は
不安でいっぱいだった。
顔は変じゃなかったかな?
とか
ちゃんと喋れてたかな?
とか
連絡してくれるかな?
とか…
その後の電車内は
冷房がよくきいていて
あかりが寒いとも言ったくらいなのに
私は…なぜだか暑くてたまらなかった。
