「―お前は、執事失格だ」
「…………はい?」
執事…失格だと?
「…それはどういうことですか?
技術面でですか?」
「―――姫華様がいい例だろう」
…………姫華がいい例?
「―――まぁ…いい。来月には日
本をたてるように用意をしておけ」
「わかりました」
「えらく素直だな」
「フランスに留学なんて、執事と
しては光栄なことですからね」
………執事として…“は”
だけどな。
―――口には出さねぇけど。
俺が執事として
“失格”なのは、
技術面なんかじゃなくて。
“精神面”のことを
親父は言っているって、
……………わかってる。
―――親父は、
俺がかつて姫華に
持っていた感情も、
今俺が柚に持っている感情も、
恐らく…何らかのカタチで、
“知っている”から―…。

