―――柚が、いなくなった。
昨夜(ユウベ)は確かにいて、
体を重ねて
愛を確かめ合った柚が、
朝、俺が目を覚ましたときには
もう隣にはいなくって。
柚の部屋…正確に言えば、
柚のいる使用人部屋に行くと、
柚がいたところは、
跡形もなくなっていて―…。
―――柚…“自身”はもちろん、
柚の物さえも何1つとして、
残っているものはなかったー…。
―――そう。
まるで……
柚なんて使用人、初めから
いなかったみたいに
周りはいつも通りで。
いつも通りすぎて。
…………どの使用人に聞いても、
返ってくる答えはみな同じ。
“知らない”
―――その、ただ1つ―…。