「………私が、この家に相応しく
ないと、旦那様はそう、おっしゃ
いたいんですね?」

「そうだ。わかってい…「……で
したら私なんかさっさと、追い出
せば良かった話なのでは?」」

………それか、
最初からあたしなんか、
採用しなければ
よかった話でしょ。


今さらそんなこと、
言われたって…ねぇ?



「君を採用したのは当時、相楽家
に貸しがあったから。ただそれだ
けだ」

「貸し…ですか。じゃあ私は、本
当は必要ない存在だったと?」

「あぁ。そうだ。今の君は、邪魔
な存在でしかない」

……………そっか…。

あたしって、
必要ない存在だったんだね…。

邪魔…か……。

「………確かに…旦那様のおっし
ゃった通り、私は施設で育ちまし
た。潤…相楽 潤と付き合っても
いました。その縁で私は、メイド
になりました」

………………だけど…。



「私は潤に会うまで…知りません
でした。人に…他人に、必要とさ
れることを。必要とすることを」

施設での生活の人間関係は、
“必ず”じゃない。

ただ……“関わる”だけ。


自分が損をしないように…
得をするようにって、

悪い言い方をすれば、
“利用”し合うものだった。


「潤に出会って、恋をして、働い
て、失恋して、また恋をして……
楽しいことばかりじゃない。ツラ
いこともあったし、苦しいことも
あった。………だけどここで私は
ちゃんと、“必要”とされた」

………と、思ってる。