カワイイだけじゃ物足りない


ドサッ

油断していたせいか、驚きと共に思わず鞄を落としてしまう。

声の主は、勿論ずっと考えていた青山くんであった。

「あわ………」

「あわ?」

いきなりの出現に何を口にしたら良いのかわからず変な言葉ばかりが漏れる。

「ぁ………」

「えーと、鞄落ちたよ」

驚きのあまり思考停止状態であったが、青山君の言葉で我に帰り落とした鞄を慌てて拾う。

「で、面白い物とかあったの?」

私をじっと見ながら先程の質問を再度尋ねてくる。

はっきり言うと自分自身に笑ってしまったなんて言ったところで伝わる訳なんかないし、余計彼をこんがらがしてしまう。
純粋に質問してきたのだから筋が通る答えを。

「……面白い物はないよ…ただ思い出し笑いを」

青山くんの顔を見るとキョトンとした表情をしている。

あれ?
私、変なことを言ったか……な

って一人で思い出してニヤニヤしてるなんてただの根暗じゃない。
あ、でも根暗は間違っていないし…そもそも私。

「あはは、僕もたまにあるよ」

「へ?」

「思い出し笑い なんかふと面白いこと思い出して笑っちゃうよね」

あはは、僕もだよと笑いながら、私の答えに賛同をしてくれた青山くんに対して、思わずこちらが呆気に取られてしまった。

流石だなぁ。

美少年って顔だけでなく性格も完璧なのかと妙に納得をしてしまう。

ってこういう会話は普通なのかな?
私……ほとんど会話ってものを家族以外としてこなかったからなぁ。
よくわからないや。

そのまま青山くんと歩く形で歩みを進めることに自然となっていた。