1997年3月上旬。天気 晴れ。

「てか、先生何処なのー‼」

高校受験の当日、私 渡邉奏は受験する高校の正門前で引率者である小川先生を捜していた。
「あいつ早く来て、理科教えてくれるって言ったのに、こんな日に遅刻しやがって‼」

母子家庭の私は滑り止めなんて受ける余裕なんてなく、この隣町の工業高校のみの受験だった為、今までの人生でこの時期は一番血眼になって勉強をしていた。

そんな私を見兼ねた担任が、引率者である小川先生にお願いをし、
受験当日に気になる点を最終チェックしてもらえる様になっていた。


が、、、まさかの遅刻。

「もしかして、もう校舎の近くに車止めてんのかな~」

なんて、駐車場を捜していた。

しかし、田舎の工業高校。やたら広い。若干、迷子になりつつ取り敢えず前にいたナイキの赤いスポーツリュックを肩に引っ掛け佇んでいた少年に声を掛けた。






それが、彼 佐藤誠斗 との出会いだった。