開いたドアの向こうに立っていたのは…
「あ、ごめんね。なんかしてた?」
こ…
滉平さん…!!!
あたしは緊張のあまり、何も言えなくてただ呆然と見つめてしまった。
な…なんでいるの?!
今日は部活来てないんじゃなかったの?!
遠くからしか見たことなかった人がこんな近くに立ってる上に
話しかけられちゃったからあたしの緊張はピーク。
タオルを持つ手が震えてる。
「おーい?」
滉平さんの声であたしは我に返った。
「あっ、はい。すいません。」
滉平さんはもう制服姿でカバンを持っていた。
「あのさ、そこにある俺のシューズ袋取ってくれない?」
「わ…わかりました。」
もう話す機会なんてないんだろうな…
そう考えると妙に話そうっていう気が湧いてきた。
あたしはシューズの袋を取る前に勇気を出して口を開いた。
「あ…あのっ、今日、部活やってました?」
滉平さんはちょっと驚いたような顔をしていたけどすぐに
「今日はやってないよ。でも練習試合は見てた。出てたでしょ?」
出てたでしょ、なんて言われて死にそうだった。
あれだけ憧れて大好きな人にあたしのことを見てもらえたんだから。
「は…はい。」
とりあえずシューズ袋を取って渡した。
「あ、お願いします…。」
「おっ、ありがとな。」
ありがとな、だって!!!!!!!!!!
もう今すぐにでも部室で倒れそうになった。
滉平さんは袋にシューズを入れてこっちに背を向けた。
もう楽しい時間は終わりって思うと悲しかったけど
話せたこと自体があたしの一生の誇りとなった。
あたしも戻ろうって思って立ったら滉平さんがふいに後ろを向いた。
「あ、ねえ、俺のこと知ってるの?」
「知ってるも何もあたしはあなたが大好きなんです…」

