科学の資料集を見つめながら、
平良桃子〔タイラモモコ〕は考えていた。
美しい宇宙の星々はいつかは消えてしまうのだ。
私の生まれる前に生まれて私が死んでから死ぬのだ。
その考えがあまりに漠然としていて笑いが漏れた。
別に桃子は宇宙が好きなわけでも詩人な訳でもない。
ただ、恋をした女の子だというだけだった。


杉山青海〔スギヤマアオミ〕は憤怒していた。
何にかはわからない。
ただ、何かに憤怒していた。
世の中の理不尽さかもしれないし、己の小ささかもしれない。
彼女も、恋をしているだけなのだ。


大野彩美〔オオノアヤミ〕は、ただただ幸せだった。
小さなことでこんなに幸せになれる自分を不思議に思いながらも、それもどうでもよくなるほど幸せだった。
それは、彼女は恋に落ちているからだ。


高村真奈〔タカムラマナ〕は走っていた。
あてはないのに、だ。
ひたすら走れば何かから逃げられる気がした。
全てを振り払える気がしたのだ。
ただ何もかもが苦痛だった。
彼女もまたどうしようもない恋をしている。



この物語は4人の女子高生のありふれた恋愛について綴ったものである。