「真っ暗な中でね、尋ねられるんだ。
『中に入れてくれないか?』って。
それは窓の外からで、
奴らは決まって肝試しの時を狙ってくる。
仲間だと思って、開けてやると、
そいつは中に入ってきてしまうんだ。
建物の中じゃ無く、
窓を開けた人間の中にね」
いつもの言葉を言わずに終わり、
そうしてようやく先輩は俺から離れた。
「ところで、最後の教室から、
下の階まで、俺たちを追い越さずに
向かう事は出来るのかな?」
離れた先輩は、俺の前に立ち、
ニヤニヤと笑いながらそう言った。
「それって……」
思わず1歩、後ろに下がった。
「じゃ、行こうか」
足を引いた俺の肩に、
先輩は再び腕を回し、
半ば引きずるように階段を降りていく。


