「なあ佐野君
本当の話を教えてやろうか」
「……別にいいですよ」
拒否とは取らずに、
先輩は話を始めてしまった。
「本当はね、あの絵の人物は、
自分達の代わりを探しているんだ。
だからあの絵の前でキスすると、
嫉妬かどうかは知らないけど、
キスできたんだから、
もう十分だろう?
だからここと代わって欲しい と、
やっぱり襲い掛かってくるんだって」
犯行理由が意味不明だ。
だけど怪談話なんて、幽霊なんて、
得てしてそんな物だろう。
「それでね、右側の人物が、
昼休みに見てみたら、少女になってたんだ
前はどんなだったか、覚えているか?」
その問いに、俺は首を振った。
……そういえば神花先輩に連れ出された、
あのクラスメイト、誰だったっけ?
思い出そうとした時に、
練習開始の合図が鳴った。
「まあ、嘘なんだけど」
いつもの通りのその台詞で
先輩も俺の後ろから去って行ったようだ。
よし、柔軟終了。
先輩の怪談話も、終了だ。