「……残念」
神花先輩の呟きを聞きながら、
俺の首は正しい角度に戻された。
「絵の中のみんな、困っちゃったよ」
片手で絵を指さしながら、
神花先輩はそう言った。
「本当、困っちゃったよ」
私も。と、困った顔で言う。
「困って結構ですよ」
対する安藤先輩は、したり顔。
そしてそのまま俺の手を引き、
渡り廊下を後にしようとする。
「……先輩、」
「嘘だよ、全部」
尋ねようとした俺を遮って、先輩は言う。
「見てごらん、神花先輩、居ないだろ?」
渡り廊下を抜けてから、
振り返ってみると、
彼の言うとおり、人影が無い。
10秒、経ったか経たないかの内に。


