「ねえ佐野君、キスしよう」
「……はい?」
変わり者、だけど美人。
つまりは残念な美女。
そんな風に言われている神花先輩が、
部活後の俺を呼び出し、そう言った。
「駄目ですよ、佐野君の唇は渡しません」
そう言って俺の背後に立っていた先輩が、
俺の口に手を当て、ガードしている。
理由?
神花先輩の顔がやたら近いせいだ。
もしも彼女が普通の美人だったなら。
それなら俺は、喜んで差し出そう。
だけど神花先輩は、
誰も居ない旧校舎の体育倉庫の
跳び箱の中に潜んでいるような人だ。
絶対に、何か裏がある。
そして安藤先輩。
この人は何故、付いて来てるんだろう。