塩田課長が絞り出した声に、香絵は、

「そうですか…、主人…頑張ったんですね…。生きたくて仕方がなかったんですね…。必死に生きようとしてくれたんですね…。」

と、こぼれ落ちる涙をそのままに携帯を開けた。

画面は、着信履歴…。
津波の直前の、話す事ができなかった彼からのコールだ。

「私達にも…気を配ってくれて…。子供達に言い聞かせます。パパは生きたくて頑張ったんだって…。だから、今度は私達がこの命を大事にしなくてはいけないんだって…。」