「ごめんね…お母さん。」

「ノナ?早く…!」

僕は顔を横に振ってから…。

「空耳なら…それでもいい…。後悔したくないんだ!」

と、お母さんを見つめた。
お母さんも、僕をジッと見つめてきた。

そして…。

「わかった…行きなさい…。そのかわり、絶対に帰ってくるのよ…。お母さん…待ってるから…。」

お母さんは、涙目で僕に言うと、海底へと潜っていった。

僕も、

「ゴメンね」

と、呟いて陸へと泳ぎ始めたんだ。



この時、津波は、入江町の海岸線に到達し、水嵩をドンドンと増していった。