町人の娘ならば結納(ユイノウ)の時以外
着る機会は全く無いと言って
良いほどの色とりどりで
鮮やかな着物で溢れていたのだ。
私は..と言うと
八乙女屋の名が落ちるかも
知れぬと、普段着の中では
綺麗で品の良いものを
選んだものの その柄は
質素であまり目立たないもの
であった。
…やっぱり父上の言い付け
通り 着て来るんだったかな-..
と、ぽつんと呟いた時。
「他の女子とは違う雰囲気を
出すものがいる。
祖(ソ)はあの女子と話しを
してみたい。」
その声は掠れていたが、
私の耳にははっきりと
聞こえた。
