「・・・行ってきます」
誰もいないリビングに向かって、そう言った。虚しくなるのはいつものことだ。
わぅんっっ!わぅっ!!聞きなれた鳴き声が耳に入った。
「チョコ」
チョコは、私が飼っている犬でウエルシュ・コーギー・ベンブロークという犬種だ。胴長短足というとても可愛らしい外見だ。チョコは、私の心を癒してくれるものの1つであった。
「もう、しょうがないかぁ・・・」
と、言いながら、私はしばらくチョコと戯れることにした。ボールを投げてはチョコがとる。そんな一連の動作をしばらく続けていると、不意に後ろから、
「真海」
と声がかかった。お父さんである。
「気をつけて行って来いよ」
「?うん。分かってるよ。―じゃぁね、チョコ。行ってきます!」
今度の、行ってきます、はお父さんとチョコに向かって言った。お父さんの顔が妙に寂しげだったような気がした。
「いってらっしゃい」
後ろからいつもの力強いお父さんの声が聞こえた。