『……オ……イ…………』
「やっぱりこっちからだな」
奥の扉に近づくにつれて声が聞き取れるようになってくる。
『…………ダ……テ……』
扉まであと1メートルほどのところに来ると、また声が聞こえた。
「何て言ってるんだ?」
莉人は声を聞き取ろうと扉に耳を近付けた。
『……オモイ……ダシテ……』
「思い、出して?」
幼い子供のようなその声は『思い出して』と言っていた。
莉人は声の正体を確かめようと、ドアノブに手を伸ばす。
『リヒト』
突然名前を呼ばれ、莉人の体がビクッと硬直した。
呼ばれた方を振り向くと、黒猫が莉人を見上げていた。
「……レオ」
『遅いから迎えに来たし』
「あぁ、ありがと」
レオは身を翻し、元来た道を歩き出した。その後に莉人も続く。
『案の定迷ってたし?』
「迷ってない!寄り道しただけだ!」
莉人はそう言ってもう一度あの扉を振り返った。
もうあの声は聞こえなかった。
「やっぱりこっちからだな」
奥の扉に近づくにつれて声が聞き取れるようになってくる。
『…………ダ……テ……』
扉まであと1メートルほどのところに来ると、また声が聞こえた。
「何て言ってるんだ?」
莉人は声を聞き取ろうと扉に耳を近付けた。
『……オモイ……ダシテ……』
「思い、出して?」
幼い子供のようなその声は『思い出して』と言っていた。
莉人は声の正体を確かめようと、ドアノブに手を伸ばす。
『リヒト』
突然名前を呼ばれ、莉人の体がビクッと硬直した。
呼ばれた方を振り向くと、黒猫が莉人を見上げていた。
「……レオ」
『遅いから迎えに来たし』
「あぁ、ありがと」
レオは身を翻し、元来た道を歩き出した。その後に莉人も続く。
『案の定迷ってたし?』
「迷ってない!寄り道しただけだ!」
莉人はそう言ってもう一度あの扉を振り返った。
もうあの声は聞こえなかった。


