「莉ー人!なんでこんなとこで立ち止まってるの?あ、倫縷、壱夜おはよう!」

一度は席に着いたものの、莉人がいないことに気付いた心優は莉人のいる入口へ戻ってきた。

「お前はいつでもテンション高いな」

壱夜が呆れ気味に呟いた。

「悪かったわね。学校通うの初めてだから勝手にテンションが上がっちゃうの!」

そんな壱夜に心優は頬を膨らませながら反論する。

「学校行ってなかったのか?」

「うん。ずっと家庭教師に教えられてたの。だから学校って憧れてたんだ」

心優はまるで祈るように手を組み、キラキラと目を輝かせている。

「さっすが貴族様!」

壱夜の言葉を聞いた直後、心優の様子が一変した。

「……あたしは貴族じゃない」

先程までのテンションの高さから打って変わり、静かにそれだけ言うと壱夜から離れていった。

「なんだあれ。変わりすぎじゃないか?」

心優の豹変ぶりに壱夜は隣にいた倫縷に同意を求める。

「壱夜、他人のプライベートに踏み込むな。お前だって聞かれたくない事くらいあるだろ」

「そういうもんか?」

壱夜は釈然としないといった様子で莉人の隣にいる心優を見つめていた。