それは、一瞬の出来事であった。
少女が入ってきてから数分後には、炭とかしたゴブリンが２体の出来上がりである。

セリアは、まだ痛む体を動かし、そばにあった絹を体に巻きつけて立ち上がった。それを見つけた少女が駆け寄ってきた。

｢御無事でしたか？｣

そう聞かれたセリアはただ頷く。

｢間に合ってよかったぁ〜。｣

間に合ったのが嬉しいのか、少女は１人はしゃいでいた。

｢あ、あの、助けてくれてありがとう。｣

セリアははしゃぐ少女に礼を言った。
それを聞いた少女は、はっと我に返りセリアに向き合った。

｢お嬢様の依頼でしたから。｣

そう、少女は言った。

セリアは事情が飲み込めずにいた。それを察した少女が成り行きを語ってくれた。
すると、少女の名がエリスという名前で、彼女のマスターが…

｢リーナ・ベルバラック？｣

｢はい。リーナお嬢様です。｣

にこやかに語るエリス。その挙動で、この少女がどれだけマスターを信頼しているかが判った。

｢マスターが、あなたの危機に気がついたので、一番近い場所にいた私が急遽飛んできましたです。｣

ニコニコしながら語るエリスからは、ゴブリンを瞬殺出来るとは到底思えなかった。しかし、現に床には２体の炭とかしたゴブリンが転がっている。
それを眺めていたセリアはあることを思い出し慌てて外に駆け出した。

｢デイルが危ない！｣

デイルが魔族に狙われていることを思い出し、そのままの格好で外に出ようとするセリア。体中に走る痛みによろけた体を優しく受け止めたエリスが、諭すようにセリアに語った。

｢デイルさんは大丈夫です。マスターが救出しに向かいましたから。｣

｢相手は魔族よ。魔物とは訳が違うわよ。あなたのマスターを信じない訳じゃないけど。｣

だから行かせてと言わんばかりに、外に向かおうとする。

｢それでも大丈夫です。マスターは神族ですから。｣

一瞬、何を言われたのか理解できずにいたセリアにもう一度、エリスは囁いた。

｢マスターは神族ですから大丈夫です。それより、あなたの方が酷い有様ですから、マスターの城に行きますよ。｣