相手のテリトリー内に単身で向かうのはかなり危ないのだが、この街の治安はよい方なので、取りあえず行ってみる事にした。

(何かしようとしたら、眠らしちゃえ。)

詠唱がいらなく、多数の人に一度に効果のある魔法である。また、剣に関してもデイル直伝で教えてもらったため、そんじょそこらの傭兵程度では太刀打ち出来ないほどの腕前である。

だからこそ、油断したセリアであった…。

通されたお店の中は、甘い匂いがだだよっており、更に奥の部屋に通されると、そこには1人の占い師が水晶を覗いていた。

「サリトの森に行きたいのかな?」

セリアが占い師の前にある席に着くと、質問する前に内容を確認してきた。
ここまでなら、エセ占い師なら良くやる事なので、あまり気にはしないはずだった。

「それとも、サリトの森の中に入る方法が知りたいのかな?」

セリアは顔には出さなかったが、一瞬焦りを感じた。
サリトの森の中は普通にしても入る事は可能である。そのため、普通の人は『中に入る方法』なんて事を考えない。
それを少なからず、この占い師は知っているという事になるのである。

「何か知っているの?」

セリアは慎重に答えた。
どうやら、相手は私の事を知っての行動だったようであった。
「なぁに、簡単じゃよ。この私が連れていってあげるから。相方だけは…ね。」

占い師はそう言うと、かぶっていたフードを脱ぎこちらに顔を向けた。

「っ!!」

その顔はセリアと全くと言ってもよいほど似ていた。ただ唯一の違いは、目の色だった。セリアは髪と同じ黒眼をしているが、目の前のセリアは赤色をしていた。
その目と目線が合った瞬間、セリアは急激に体の力が抜けて、その場に跪いてしまった。