「あの、和樺・・・俺、なんかしたかな?」



菜乃香の様子の変化に湊も気が付いて、小声で聞いてきた。



「えっと・・・・」



あたしが答えを出せずにいると、菜乃香は踵を返し、自分の席に戻っていった。


自然に肩に力を入れていたのか、あたしはため息とともに肩を下した。



「俺なんか怒らせるようなことしたっけ?」


「ううん多分違うと思う。朝来たら、もうあの顔だったから。あたしもあんなに怖い顔見たの・・・・あ」


「ん、なに?」



あんなに怒った菜乃香を見たのは初めてだと思ったけど、違った。


一回だけあったんだ。しかもそれは・・・・


あたしは無言で湊を見つめた。



「ん?どうした和樺」



いつもの優しい表情の湊。


まさかね。あたしは“ううん”と首を振った。