「え……」

抱きしめられて、いろんな出来事が、走馬灯のように、魅麗の脳裏を駆け巡った。

その途端、怜(ユウ)のことも言ってしまいそうになった。

【もう、言ってしまおうか……。隠してるつもりではなかった。結婚をしてるわけではなかったし、怜樹と別れた後に、日本に帰ってきた後に、わかったことだったから……。私が、勝手に産みたいと思ったことだもの。でも、まだまだ、再会するなんて思ってなかったのに、こうして、見つけてくれて、会ってしまっちゃったから、言わないように努めるの、なんだか変みたいじゃない……】

魅麗は、怜(ユウ)を育てることを、決して、辛いなんて思ったことはなかった。寧ろ、楽しんでいた。
自分のお店をオープンさせ、怜(ユウ)と新しい人生をスタートさせた。ともに生きる喜びを知る。
日々、違う毎日に、魅麗は、生き甲斐を感じていた。
そのことを、あれから私は、こんな素敵な宝物を授かって、こういう人生を生きてきたよ、こういう毎日だったよと、怜樹に、全てを言えない自分に、奥歯にものが挟まったようで、なんだか嫌だった。
言ってしまえば、このもどかしさから解放されて、楽になると思った。

が、
けれども、

そんな思いを、魅麗自身が納得しなかった。

怜(ユウ)が自分のお腹に宿ってると知った時、独身の自分が産みたいから、産んで自分で育てると、最初に、自分で、決めたじゃないか、と、魅麗自身が、今更打ち明けることを、許せないのであった。