「は~い」

魅麗は、キッチンから店へと出てきた。

「綾ちゃん、来てたのね。ごめんなさいねぇ」
「あ、魅麗さん」

うたた寝とはいえ、寝起きなので、綾は、少しぼーっとしていた。

「紅茶飲む?」
「うん」

魅麗の出してくれた紅茶によって、綾は、だんだんと徐々に目を覚ましてきた。



「綾ちゃんごめんねぇ~、寝ちゃってたのよ」
「びっくりしたんだからぁ~。入口は開いてるのに、魅麗さんがいないから。テレビはついたままなのに、姿がないだもん。泥棒が入ったら大変だよ」

「そうだよね、気を付けます」
「ホントだよ」
綾は、口をすぼめて、妹が姉を説教する様な口調で言った。
「はい、すみません」
魅麗は、素直に言う。

「でも、良かったぁ」
そう言うと、綾は、笑顔になった。
そして、魅麗と綾は、顔を見あわせて笑った。
綾は、思っていた。

【子育てや、自分のお店のオープンで、魅力さん、目の回る様な毎日だったもんなぁ。お店の準備だって、ひとりでやってた。疲れが出る時だよねぇ】

雑貨を並べたり、装飾をしたり、看板をつけたり、ペンキを塗ったり、掃除をしたり……。ディスプレイから大工仕事まで、ひとりでしていた魅麗のことを、思い出していた。
その合間、怜(ユウ)のお絵描きを見たり、一緒に遊んだりと、我が子に目を配ることを欠かさない。
綾は、とても感心していた。


テレビに、沢山の綺麗な絵画が映った。
またテレビで、美咲 怜樹の話題が流れている。
美咲 怜樹の個展が開かれるという話題だった。