お店に入ると、修は、飾ってある絵画が目に入った。

徐に、絵に歩みを寄せる。

「あのう…、すみません」

「?」

修の声かけに、魅麗は、修の方に目を向けた。

「これ、美咲 怜樹の絵ですよね?」

魅麗は、目を丸くした。
何故なら、この宇宙の絵は、世に出ていない絵だから。
この絵は、怜樹が無名の頃に、魅麗にプレゼントしたもの。

「えぇ。わかるの?」

魅麗は、不思議だった。

「はい。つい先日、テレビで見たんです」

「え?」

この絵は、ひとつしかないので、魅麗は、疑問を持った。

「テレビで?」

「はい。この絵の下書でした」

「あぁ」

魅麗は、それで納得がいった。

「美咲 怜樹さんが、愛する人にプレゼントしましたって言ったから、騒ぎが起こって、凄い反響が起きてました」

「…そうなんだ」

魅麗は、目を伏せて微笑んだ。

「あ、愛する人って、」

修が気付いたのに気づいて、綾が、口をはさんだ。

「内緒だよ」

「あぁ、うん」

修は、すぐに察して、言葉を飲んだ。
そして、綾の隣に腰かける。

怜(ユウ)が、綾に歩み寄り、自分の描いた絵を、得意げに見せる。

修は、その光景を微笑ましく見ていた。

「絵画のテレビは、よく見るのですか?」

魅麗は、二人に紅茶を出しながら、修に尋ねた。

「あ、いいえ」

修は、紅茶を出されて、会釈をする。

「僕の祖父の家の所がテレビに映って、たまたま家族で見てまして」

「おじいちゃんの家がテレビに映ったの?」

綾は、驚いて、思わず尋ねた。

「おじいちゃんの家の近くの、砂美島の海が映ったんだよ」

「あぁそうなんだ。あの海、綺麗なんだよねぇ。いいなぁ」

「今度、一緒に行く?」

「あ…うん」

魅麗は、綾と修を、にこにこしながら見ていた。