シーーーーーーン。




水を打ったように静まり返った教室に、阿佐美みづきの落ち着いた声は美しく響き渡る。



「共学になってもう八年目に突入したっていうのに、相も変わらず女子生徒が少ないと聞いていたのでまさかとは思っていましたが…」


教室をくるりと見渡して、阿佐美みづきは続ける。


「これじゃぁ私がいたときとたいして変わらない…いえ、それ以下ですね」


ため息をつくその姿さえ、思わず魅入ってしまう生徒たち。

そんな中、窓際の最後尾の席で我関せずといった風に寝込んでいた男子生徒が、むくりと起き上がった。


「………」

「…あ、哲也。起きたのか」

隣にいた生徒が小声で話しかける。

「…なんのさわぎだよ、うるせー…」


バンッ!!!!!





「…!」


突然黒板を殴りつけ、生徒たちににらみをきかせる女のセンコー。




「まず人が話してる時は静かにしてやがれ!そんくれぇ小学生のガキでもできるわっ!」

「ガ、ガキって…」

「それから人様の私物を巻き上げるたぁどーいう了見だぁ!?よりにもよって女の子から!言うに事欠いてブスたぁ聞き捨てならねぇな!!」


「りょ、了見…」


教室中が呆気にとられてる中、

ただ一人口元に微笑みを浮かばせていたのは

窓際最後尾の席をキープし続けている、風間哲也、ただ一人だった。




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