高弘はいつも通り行き先を私に言わずひたすら山道を走った。


ガッタンガッタン


{車がすごく揺れる}


私は車酔いが激しい。


{どこいくの?}



教えてくれないのはわかってても聞いてしまう。


[さぁどこでしょ~う]



あはは。



{教えてよ~。}


[だめ~]


{このじゃれあいが好き}




車が止まった場所は長い坂の上にある丘。


車を降りると目の前にたくさんの明かりが見える。


{わ~。すごいキレイな夜景だね。}



[そうだろ。]


高弘は自慢げに言った。



{ここどこ?}



[岬公園のすぐ上だよ]



そうなんだあ。



{近くにこんなとこがあるなんて知らなかったよ。

でもこんなことたくさんあるんだろうな。}



[ん?]


{近くにありすぎてわからなくなってること。}

{きっとたくさんあるんだろうね。}



[俺さ、嫌なこととか辛いこととかあるといつもここに来るんだよね。]


[ここに来ると自分の悩んでることなんかちぃちゃなことだな~って思うんだあ。]


{高弘にも悩むことあるんだあ。}


《どうみても悩みなんてなさそう》


[そりゃあるよ。]


[人間だからね]



[朱莉もあるだろ?]



{あ、うん。}


高弘は夜景を見ながら大きく深呼吸した。