暗い住宅街。


街灯の明かりだけじゃ、ひー君の表情が読み取れない。













ひー君はふと夜空を見上げた。




「つまらない話だけどさ」


「え?」


「あの北極星の光は、400年前の光だって知ってる?」


「…………」


ひー君の視線を辿ると、清んだ冬空には一際明るい星が見えた。


「光が届くまでに、それだけのタイムラグが生じるんだ」


「うん」


「太陽の光ですら、8分20秒かかるんだよ」


「!それは知らなかった」


あたしの驚きに、ひー君はニッコリ微笑んだ。


「こんな仮説はバカバカしいんだけどさ」


「うん?」


「例えば1光年離れた星へ行ければ、1年前の俺達が見れる」


「!」


「ちょっとしたタイムスリップだよね」


夜空を見上げるひー君は白い息をはいた。









「あの頃の俺たちに、会いたいな」


「ひー君…」


「そしたら俺、自分に言う。もっとしっかり三咲の傍にいろよ~!ってね」


ひー君の冗談めいた話し方に、だけどあたしは胸が締め付けられた。