「あの…ひー君…?」 部活でジャージ姿の生徒が行き交う下駄箱で あたしの声にひー君が振り返る。 「ん?」 「………」 「え?なに?」 黙るあたしに、首をかしげるひー君があまりにも自然で――… 「う…ううん。なんでもないよ!」 もしかしたら、ひー君のことはあたしの思い過ごしだったのかも知れない。 そんな甘い期待が胸をよぎり… そして――… 臆病で卑怯なあたしはそれ以上の真実を確かめる事を止めてしまった。