寝言か………
俺はまた席に戻ろうとした。
しかし――…
「こ…う…」
また名前を呼ばれて、思わず振り返る。
「っ………!」
橘は眠りながら泣いていた。
なんで泣くんだ?
どんな夢を見てるんだ?
俺は橘の傍に立つと、その頭を優しく撫でた。
「嫌わな…ぃで…」
橘の目からは細い涙が流れ、小さな寝言が生徒会室に落ちる。
昨日のことをまだ言っている橘。
眠りながら、泣くほど心配してんのか
「ば―か」
俺は寝ている橘に静かに言う。
「その……逆だっつの」
その時、
「…ふ…へ…」
俺の言葉に反応したのか、寝ている橘の口元が小さく笑った。
「こ…ぅ…」
橘が優しく俺を呼ぶ。
「こ―…」
「側に……いて」
その声に答えるように、
気付くと俺は橘の髪に口付けを落としていた。
気付かないふりをしていたのに
どこで間違えたんだろう。
こいつは聖の彼女なのに…
禁断の扉は開きかけていた。



