「お前…犬かよ」


恥ずかしいやつ。


俺はバカにするようにいい放つ。


人の匂い嗅いでなにが楽しいのか。






しかし橘は嬉しそうに


「わんっ」


と吠えてきた。




「!」


まさかの橘の切り返しに、俺はドキッとした。


は?

いやいや、ドキッてなんだよ…


しかし俺の気持ちが顔に出ていたのか


そんな俺をみて橘まで赤くなった。


「わ…わぅん…?」


耳が垂れた犬の真似をする橘に俺はその頭をぺしっと叩く。


「いい加減にしろっての」


俺の低い声に橘の背筋がぴょんと伸びる。


「は、はいっ!すみません」


「仕事に戻れ」


「はははいっ…」


橘はパタパタと席に戻る。





そして俺たちはいつものように仕事を始めた。