ドキドキしてきて、もしかして……という期待が胸に押し掛ける。
だけど児玉くんは小さく開いた口をギュッと閉じると、あたしから目を逸らして他の友達と準備を再開した。
「花菜……」
奈々は何かを感じたのかあたしの名前を呼んでちょっと笑った。
あたし達も更衣室に荷物を置いて準備を始める。
ちょ、なんなの一体さっきのは。
絶対話しかけられると思ったんだけどな……。
「ねえさっき児玉くん花菜に話しかけようとしてたよ!」
器具室に入った瞬間に奈々が嬉しそうに言う。
"やっぱりそうだった?"って聞けば、"あれは絶対そうだった!"って。
ふと児玉くんを見てみると、藤木くんとボールを出していた。
……話しかけてくれればよかったのに。