air






どうしよう、あたし確実に好きだ。


机の横に掛かっている重たい鞄を持ち上げながら考えるのは、今日の選択授業のこと。


あんなに長かった3時間が終わった後、部活に行く準備をしている今になるまでがあっという間で。

どれだけあの3時間、自分が児玉くんを意識していたかすごくわかった。




「花菜、行こっ」




適当な返事を返して鞄を持つと、あたしを待っていてくれた沙織とちなの隣に並んで体育館へと向かう。




どうしようもなく相手が気になって、ドキドキする。

それはあたしが今まで好きだった人の時と同じ症状。


好きなんだなってすぐに気付いた。



……沙織達に打ち明けた方がいいかな?

けど応援されるのとか苦手だし、もしなんらかのことがあって、あたしが児玉くんを好きって噂が流れて本人に伝わったら……。



以前、好きだった人にあたしの気持ちが噂で伝わっちゃったことがある。

その噂を聞いた彼にみんなの前で好きじゃないって言われたのがすごいトラウマで。

本当は好きだったけど恥ずかしくてそう言っちゃったらしくて、彼に後から告白されたけど断った。



あの時は本当に悲しくてすごい泣いたのを覚えている。

もうあんな思いはしたくない。


ああなったら嫌だし、言うのはもう少し先にしよう。


それまであたしは、ちょっとでも児玉くんに近づけるように頑張るんだ。