あたしは話しやすいように身体を児玉くんの方に少し傾ける。
「……ねえ、」
いつもの自分の声とは比べものにならない程小さな声。
児玉くんの手がピクッと動き、ゆっくり顔がこっちを向いた。
ぱっちりと合った目。
自分から話しかけたんだから当たり前のことなのに、妙にドキドキしてしまう。
ニキビなんて1つもない白い肌に綺麗な形の唇。
近いとよく見える。
……かっこよすぎ。
「……ライン引く所どこ?」
あたしがそう尋ねると、児玉くんは前を向いてしまった。
あ、無視された。
やっぱり女子は苦手……?
や、もしかしたらあたしが嫌われて……
「ん、」
一度前を向いた児玉くんがあたしの方を振り向いている。
教科書に引かれた、ラインを指差して。

