────ポスンッ
家に帰るなり自分の部屋に入って、制服のままベッドに倒れ込んだ。
今日は酷く疲れた気がする。理由なんて分かり切ってるから一々考えない。いや、考えたくない。
「何やってんの……私…」
幽霊に会いに行って
不気味な神社の境内で
幽霊を成仏させる約束をして
最後は仲良く握手
………ああ、どうしよう、笑えない。
私はいつから電波になったんだ、でも見えちゃったもんは仕方ないし、やると言ったからにはやるしかないし……
ゴロリと寝返りを打ってベッド上に転がる鞄の中に手を突っ込んでガサガサと漁ると、目当ての感触を見つけてそれを取り出した。
クシャクシャに丸められた白い紙。開いて見えた進路希望調査表の文字の下を目で辿っていく。
《──4.その他》
《───歌手》
そう書かれた字は間違いなく私のもので、間違いなく、私の夢だった。
孤独、悲しみ、不安、辛さ
そして、ほんの少しの希望
諦めていた夢をもう少しだけ見てもいいのだろうか。幽霊なんて非現実的なものと関わる間だけでもいい。もう少しだけ、夢に向かって頑張りたいと思えた。
秋が来て、結果が出せなければ諦めよう。
「夏の間だけ………少しだけでいいから、」
夢に向かって走り出す為の目に見えない勇気を掴むように、手に持っていたプリントをクシャリと握り潰した。

