触れてるけど、触れてない。
どちらか分からない交差した手から伝わるのは、
孤独、悲しみ、不安、辛さ、と
ほんの少しの、希望。
これはきっとこの男の気持ち。ということは、彼にも伝わっているのだろうか?私の気持ちが。
戸惑ったように揺らいだ私の瞳に、彼は小さく頷いた。
「俺と同じだな」
「…………」
何も言えない。その通りだと思ったから。
夏休みが終わって、秋が冬に変わって年を越したら、受験をして春が過ぎたら大学生だ。
そう考えると遊んでいられるのは、せいぜい秋が来るまで。その間にこの男を成仏させれば、何か変わるのだろうか、私の中の何かが。
私は小さく溜め息をついた。
「……私は何をすればいいんですか」
「手伝ってくれるか?」
「期間限定なら」
「期間限定?」
少し驚いたような男に向かって、私は右手を差し出した。
「秋まで。それまでは……手伝いますから」
「十分だ、ありがとう……ん?」
「だから、その、……よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
触れてるのか触れてないのか曖昧な境界線上の握手は、見た目は酷く不気味だったけど、
交差した部分だけは、少しだけひんやりした。

