「あー……、やっぱ駄目か」
やっぱ?
男は少しトーンの落ちた低い声で呟くと、確かめるように手を横に振って、その手が私の手を何度も通り抜けていく。男の身体は透けているのだから当然といえば当然だけど、幽霊に当然も何もないような気がする。
「………なあ、手伝って」
「はい?」
「俺は成仏したいんだ、手伝ってほしい」
「…………」
成仏。
それは私の専門でも何でもないし、これ以上巻き込まれたくない私は首を横に振った。
「無理です。自分で神社に行けばいいじゃないですか」
「それは無理。俺はここから出れないし、それに……」
「それに?」
男の真剣な瞳が真っ直ぐに私を映す。その瞳に射抜かれたように私は息を呑んで立ち尽くした。
「お前じゃないと無理なんだ、心」
「……っ」
なんだろう、この気持ちは。
胸が締め付けられるように、悲しい。
もしかして、これはこの男の………

