「あげたくない・・・」

「えっ?」

「あげたくありません、この子には、この子にだけは・・・
もし聞き入れていただけないなら今ここで窓から飛び降りて死にます!」

窓に駆け寄り手をかけた。

「待ってください。落ち着いてください。この子はあなたからの
移植をしないと1年持ちません。それでも気持ちは変わりませんか?」

「変わりません。」

ぞうもつやさんは説得をあきらめた。

「わかりました連絡します。ご家族にあってきます。」

出て行こうとするぞうもつやさんを引き止めて

「ここから連絡してもらえませんか?この子のこの家族の悲しむ声・・・苦しむ声・・・聞きたいんです・・・」

「わかりました。」

電話をオンフックにして電話をかけ始めた。

「ドナーの方からのご依頼があって、移植ができなくなりました。
申し訳ございません。」

母親の鳴き声が聞こえる。父親がすすり泣く声が聞こえた。

「ドナーの方に会うことはできませんか?どうかどうかお願いします。
母親が懇願している。」

ぞうもつやさんが私を見る。

「いいですよ。ご家族でいらっしゃってください。と伝えた。」

直接対決できる。しかも私が有利に・・・・
私に運が向いてきた。
「思い知らせてやる・・・」

私の中の悪魔が目を覚ました。