「検査の結果、あなたの臓器は諸経費を引いて受取額が1500万円になりますが
よろしいですか?」

「1500万!」

「よろしければサインをお願いします。このサインを持ちまして移植の準備をします。
この後はキャンセルできませんので、よく考えてサインをお願いします。」

手が震えた。震える手でサインをした。これでいいんだと何度も何度も繰り返し心の中で叫んだ。頭で考えないように何度も何度も。

「では病室に案内します。先ほど申し上げました謝礼金をお渡しになる方のお名前
住所とお手紙をお書きください。後ほど回収にうかがいます。
お食事は手術前なのでできませんが、入浴はできます。
何か必要なものがございましたらなんでもご用意させていただきます。
夜は眠れないと思いますのでご希望であれば睡眠導入剤をお出しいたします。
何か質問はございますか?」

「いいえ大丈夫です。」

「こちらが病室でございます。何かございましたらブザーでおよびください。
失礼します。」

病室はとても大きな窓があって明るかった。取り合えず
謝礼金の受取人に住所と母の名前を書いた。
うちには父がいない。私が小さいときに離婚して以来、女手一つで
私を育ててくれた。朝から晩まで働いて私を育ててくれた。
このお金で少しでも楽して欲しいな。
とおもった。母の顔が浮かんだ。すごく会いたくなってしまった。
 
「お母さん悲しむかな・・・」

悲しくなるので考えないようにした。
手紙にはいじめられていたこと、お母さんに感謝していることを
書いた。でもやぶってすてた。こんな手紙
私が死んだ後に読んだらお母さん後悔する。
なのでぞうもつやさんのことを書いた。
人のためになれるのでとてもうれしいと書いた。
ぞうもつやさんをせめないで欲しいと書いた。

「失礼します。入浴の準備ができました。どうぞ」

ぞうもつやさんに連れられてお風呂に行った。
温泉のようなお風呂でとても気持ちがよかった。
病室に戻ると夕日がとてもきれいで
最後の夕日をこの目焼き付けておこうと思った。
とても長い1日だった。
手紙がなくなっている。きっとぞうもつやさんが
もっていったんだな。
あと10時間ぐらいですべてが終わる。さあなにをしよう。