「落ち着きましたか?」
ぞうもつやさんが言った。
「はい。ありがとうございます。」
とこたえた。
「私のことを話してもいいかな?」
とぞうもつやさんが言った。
「私にも妹がいてね。肝臓が悪くてドナーを探してたんだ。
親戚にも頼んで検査をしてもらって・・・
ようやく適合者が見つかったんだ。
でも、その親戚は移植してくれなかった。
今考えれば当然だとわかる。うちにはお金もなかったし
十分なお礼もできない。
その家の父親だったから、仕事もしばらく休むことになる。
やっぱり手術をするわけだから体には負担になるし
感染症のリスクや貧血・・・その他、いろいろある。

たかが親戚って言うだけでは移植してもらえないよ。
そのうちのおばさんににこう言われたんだ
「そんなに生きたいなら海外に行って、誰かが脳死するまで待ったら」って。
その時に妹が言ったんだ・・・
「私は誰かが死なないと移植はできないんだ。
そんな思いまでしなくっちゃ生きていられないんだ。
生きたいって思うことはいけないことなんだ」って。
移植を拒否して妹は亡くなった。
母親は、看病で精神的に疲れてて、妹が亡くなった晩に
自殺してしまった。
一度に2人の家族を失ってすごくつらかったんだ。
そのときに移植をメインにした病院をつくろうと思ったんだ。
移植する人も提供する人もお互いが幸せになれるような病院を・・って。
そのために医師免許を取って、協力をしてもらえる友人に話をした。
でも、最初は馬鹿にされたな。無理だと言われた。
でも根気強く説得してやっとわかってくれる人たちと
この病院を作ったんだ。