松野の家は、古き良き日本家屋といった感じだった。
鯉が泳いでいたり、ししおどしはないけれど…
広い庭は、きちんと手入れがなされている。
応対に出たのは、お手伝いさん…じゃなくて、松野の母親だった。
母親にしては若々しい。ナズナは本当にお手伝いさんかと思ってしまった。

使っていないガレージを、アトリエにしているらしい。
ガレージいっぱいに、木や石が転がっている。ノミで石を削る音がする。

転がっていた木は、おそらく失敗作であろう。
それでも…何となく目が離せないものをかった。

音のする方に目をやると…
愛情を込めた鋭い目つきで、石に向かっていた。

作品に魂をこめるように彫っている松野の真剣さに、声をかけることもできなかった。
じっと、見つめることしか出来なかった。

こんな風に作られた作品と、私の作品が同じコンクールかぁ…

なんだか、複雑な気持ちだった。