それは7月の夏の日…
僕は高校3年生…


「起きろぉー!!
間に合わないぞ!」


朝。
外から聞こえる幼なじみの声…


「早くー!遅れちゃう!」


小さいころから
仲の良い、女の子。


クラスの中で誰とも比べられないくらい美人な子。

「兄さん…起きて。下に九条(くじょう)がきてる。」

『あぁ…わりぃ…今何時だ?』

「…7時。」

僕は服を適当に着替えて、
パンを食べていた。


僕等は双子。
そっくりな双子。


ただ当たり前のように
性格は違う。


兄はクラスの人気者。
僕は一人が好きな目立たぬ男子。


『兄さん遅いから、パン持ってくるよ。』

「おう」


兄さんは迪流(みちる)
僕は埜択(のえる)


兄さんは迪流と多くの人に呼ばれるが
僕は南波。南波としか呼ばれない。

僕は玄関にいる兄さんにパンを渡した。

「兄さん、パン。」

『埜択、サンキュー』

僕は先に玄関をでた。

「九条、おはよう。」

九条は振り向くとため息をついた。

「何だ…南波か…」

「…そうだが…」

九条は、バッグから鏡を取出し髪型を確認している。

鏡を閉じると埜択を見た。


「どぅ??
今日の私も完璧でしょ??」

九条は得意げに埜択を見上た。


「あぁ…。後はその顔何とかすればな。」


本当はそんな事思ってないのに、何故だろう。彼女を前にすると…。


「素直にいいなさいよッ」

そうじゃれていると玄関が開いた。

『あぁ、わりぃー、待たせた』

迪流が玄関から出てきた。

九条は急に黙り、
髪の毛をいじった。


「迪流…おはよ…
あ!ネクタイ曲がってる!」

迪流は面倒くさそうに頭をかいた。

『いいよ、これくらい』

そぅ言うと九条がすかさず

「だめ!もぅ、手間かけさせないでよね!」

とネクタイを直し始めた。



知っている…


九条が兄さんを
好きな事くらい。



昔からそうだ…



何故だろう…

何故こんなに胸が苦しい…