「九条の家に??」


『うん…記憶がないままは生活が苦しいんじゃないかと思って…まぁ、迪流がよければだけど??』




九条…



『てか、
また九条って呼んだなぁっ』


「あ…」


癖はなかなか消えないものだ。


「悪い…」



『それで…迪流は…??』



僕…??
確かに記憶がないのだもの
家に帰ることはできない。

そして、
家の鍵は立ち入り禁止の
あの場所に荷物と一緒に置いてきたようだ。


これは…
助かるかもしれない…


でも…



「ゆずるは迷惑じゃないのか??」


『やっと呼んでくれたわ。』


そう言うと
九条は手を握った。


『迷惑だなんて思わない。
迷惑だったら最初から言わない。
迪流…あなただからよ…』


九条…


この子は
本当に優しいんだ…


だから…
知らない間に



僕は…






この子に惹かれていたんだ…