ROSE~AI (ノンフィクション




長い病院の廊下


那智はアタシの少し後ろを、難しい顔をしながら歩いてくる。



何とか病院を抜け出した所で、もっとも顔を合わせたくない人物と鉢合わせた。



「愛美っ!」


歳のわりに綺麗に見えるのは、その人が恋をしてるからだろうか。


呼び止めるその人を無視して、その場でタクシーをとめた。


「愛美っ!アンタそんな体でどこ行くの!聞きたい事がたくさんあるのよっ!?」


アタシの腕を掴む母を、キッと睨みつけた。


「アタシにはない。」


そう言い放つと。


パチンッ!!


母は思いきり、アタシの頬を殴った。


「もっと自分を大事にしなさい!!どれだけ心配したと思って・・・」


真剣な眼差し。

真っ直ぐにアタシを見てるくせに、怯えてるのは何で?


ハハッ 笑える。


「アンタに大事にされた覚えはないけどね?」


気付いたらアタシは半笑いで。


母はそんなアタシを見て、ポロポロと涙を流してた




いいね、


あなたはそうやって泣けるんだから。



「お客さん?」


運転手にせかされて後部座席に乗り込む。


那智は片足を踏み入れながら、母に呟く様に声をかけた。


「無事に家まで届けますから。」


「・・・・」


何も言わなかったし、
そちらを見なかったアタシにはわからないけど


母は小さく頷いた気がする。



馬鹿な人


いつまでも
アタシに怯える必要なんかないのに・・・



タクシーは走り出す。


目的地へ向かって。