ゆっくり振り返り、母を見下ろす。
母は気まずそうに、泣きだしそうな顔をしながら視線を膝に落とした。
「別れ話しするつもりが、プロポーズされて・・・・・・・」
「・・・・・・」
迷っている気持ちを表すかの様に、瞳が小さく揺れてる。
母はきっと、今、何よりアタシの事を想ってる。
少し目を伏せて、母に尋ねた。
「その人の事・・・好きなの?」
「・・・・・」
黙ったまま何も答えない母を見て、
わかった事がある。
母はきっとその人の事
好きなんだろう。
本当に好きだからこそ、
簡単には言えない。
ほんの少しだけ、那智を思い出した。
「いいよ。アタシの事は。気にしないでいい。」
そう言って歩き出そうとするアタシを、母がまた呼び止める。
「でも・・・」
「・・・・・・」
でも・・・・?
振り返り、言葉を待つアタシを、ゆっくりと見上げて呟いた。
「そしたらここを離れなきゃいけない・・・」


