ガチャッ
トイレのドアが開いた瞬間、アタシは壁にもたれながら声をかける。
「何で喧嘩したんだ」
「・・・・・・」
アタシを見下ろして溜息をつく高貴に、視線を向ける。
「仕事中じゃないのか」
「アタシがバイオリン弾けって言ったせい?」
「・・・那智に聞けよ」
「高貴に聞いてんだ」
「・・・・・」
アタシの言葉を無視して、高貴は背を向け歩き出す。
席に戻った高貴を眺めて、深い溜息をついた。
「はぁぁ・・・」
アタシが思ってたより
結構事態は複雑で。
だけど解決してみたら
なんてこたない。
ただ困難にしてたのは
アタシ達。
自分自身だったんだね
後づさりして逃げるなら
転んだとしても前に進んだら良かったんだ。


