「・・・行かせない。」
「・・・・・・」
「絶対行かせない。」
振り向くと高貴が、
険しい表情で・・・
アタシを引き止めた。
「・・・・高貴!酷いよ!約束と違う」
「・・・・・」
「高貴っ!」
見上げたアタシの肩を、強く掴み腰を屈めた。
「白井を憾んでる人間はいくらでも居る。俺達もだろっ!!!!」
「・・・・・」
やられたらやり返すの?
そうやって繰り返すんだ
アタシ達は・・・
「愛美!!」
「・・・・・」
そうだよ?
憎んでた。
でもアタシは知ってる。
あの人は本当は優しい人
だから傷ついて、
だから自分を憎んだ。
だから誰かを傷つけて
ふと、遠巻きに倉木の姿が見えた。
アタシと高貴のやり取りを、バイクにまたがったまま、気にしていた。
「行こう」
「・・・・・」
高貴が小さく呟いた。
アタシは何も言えなくて、虚ろな瞳で涙を流すだけだ。
そうだ。
倉木は何も知らない。
ただ、アタシを守ろうと、連れ戻そうと・・・
「わかんない・・・」
ボソッと呟いた。
アタシは体が動かない。


