「愛美?」
俯いたアタシを優しい声で呼ぶ。
「風邪ひくから、帰った方がいいよ。」
そう言うのが精一杯。
表情を読み取られる前に、顔を背けて目を閉じた。
「・・・・・!」
グッと掴まれた手首。
振り返ると真剣な眼差しで那智がアタシを見てた
「そのままにしとくと思う?」
「・・・・・」
「迎えに行くって言ったよね?」
「・・・・・」
だんだん口調が荒くなる
「忘れたの?」
「・・・・・・」
アタシは小さく首を横に振った。
忘れてなんかいないよ・・・
「じゃあ何で帰れって言うんだよ?!」
「・・・・・・」
「会いたかったのは俺だけかよっ!!!」
目を見開き、那智を見上げる。
那智も自分の言葉にハッとした様に、口元を片手でおさえた。
「白井の・・・女になったのか?高貴が前言ってた。愛美がそう白井に言われてるって。」
「・・・・・そうだよ」
胸が苦しくなる。
1番言いたくない人に、何で1番最初に知らせなきゃなんないんだろ。
ガシャンッ!
マンションの門を片手で叩き付けた。
「・・・っ、わかってんのに・・・」
「・・・・・」
唇を噛み締めて俯いた那智は、酷く苦しそうに見えて
もう、何をどうしていいのかわからなくなった。


