真っ白なキャンパスが・・・立て掛けてあった。


「持ってかえってちょうだい。」

「・・・・」


それを抱えると、アタシの前にゆっくりと置く。



「描ける様になったら、描いたらいいわ。」


「・・・・・」

描ける様に、なったら?


「それからこれ。」

そう言って紙袋を差し出す。


アタシはそれを受け取ると、そっと中身を覗いた。


「絵の具・・・」

紙袋の中には、色とりどりの絵の具。


顔を上げたアタシに、優しい笑みを浮かべて言った。


「考えたんだけどね。黒い絵の具しかないなら、誰かにわけてもらったらいいと思うの。」


「・・・・・」

アタシはじっとその顔を見上げた。


それでも視線をそらすことなく、アタシに微笑みかける。


「あなたにも居るはずよ?そんな仲間が。」


「・・・・・」


最初の頃ならきっと、



この人が言いたい事の半分も理解出来なかったと思う。



でも・・・



「描けるかな?」

アタシは小さく呟いた。



その言葉に一瞬、驚いた様な顔をしたが、すぐにニコッと笑って見せた。


「ええ、きっと。」