「無理すんなよ」
私たちがトイレへ行こうと教室を出ようとすると、
その際に悠太がボソっとつぶやく。
ったく悠太も美紅のことになるとやさしくなるんだからっ。
その隣でもっと心配しているのは大樹のほう。
なぜかうるうるとした瞳で、体を小刻みに震えさせている。
「大樹…、大樹も体調悪いの?」
「う、ううん。 美紅ちゃんがつらそうなの見てると、僕もつらくなってきて…」
「あはは、やさしいね、大樹は。 美紅は私がなんとかするから、心配しなくていいよ」
その会話を隣で聞いていた美紅は、申し訳なさそうに、
「いつもごめんね」
と小声で言った。
「気にしないで」
そう言って美紅の腰に手を回すと、
4組の教室のすぐ隣にある女子トイレへと向かった。
「…私さ」
「ん?」
教室を出てすぐだった。
美紅は深刻そうな顔をして、だけども歩みを止めなかった。
静かな廊下に響く、私と美紅の声。
うちの学年、なぜかみんな休み時間は教室で楽しくワイワイさわいでるから…。
「入院するかもしれない」
――――――――え?
私は思わず足を止めた。
