「ミケ、このサイフ、ちょっと高いけどお前に買ってあげたいんだが、」
「あ、歌!」
「色はやっぱりミケに似合う黄色かな?ピンクも可愛いけど、」
ペラペラと何かを話すヤマビコを華麗にスルーしたミケの目線は窓の外だ。
ミケの幼なじみの与坂歌多(よさかうた)、通称歌くん。
隣の高校のハンド部らしい、性格はわりとミケに似ていて明るい。
他校の彼が私たちの高校になぜいるのか。
「うーたーっ!」
「あ、ミケー?」
ヤマビコを無視してそのまま走って教室を出ていったミケに着いてきたが、私はヘトヘトだ。
「また茜に会いに来たのー?」
「うん」
「じゃー帰ろ、何度も言うけど茜には好きな人がいるの、茜は歌のこと迷惑がってんの!」
「茜ちゃん!」
「って聞けえー!」
偶然校舎から出てきた茜に気付いたのか、説教中のミケをスルーして走っていった歌くん。
何というかカオスだ。
ついでに夏凪茜(なつなぎあかね)、この子の性格はミケとまるで真逆だ。
調理部の副部長で、園芸部にも所属している。男子とはあまり喋っているのを見たことがないが、まず天然で可愛い。
なんというか天使のような子だ。
歌くんはそんな茜にひとめぼれした、らしい。
そしてそんな茜の好きな人ってのは。
「そういえばミケ、」
「…何?」
「私ね、」
茜に抱きつきそうな勢いの歌くんに呆れた様子のミケ。
「ドロに告白されたよ」
ドロ、というのは先ほどの因泥くんのこと。
「じゃあ本格的に…」
「うん」
「六角関係じゃん…」
茜の好きな人とは何を隠そうドロ、その人だ。